翌日のこと。
 授業を終えたわたしを待っていたのは、思いがけない人物だった。


「アクセス……」

「ああ」


 昨日初めて会ったばかりの旦那様の親友、アクセスだ。
 アンニュイでエキゾチックな雰囲気、愛想の欠片もないアクセスに、同級生がビビっている。

 そもそも、人間と魔族が接する機会はあまりない。
 魔族には野蛮な種族も多いし、現にわたしの両親も鳳族に属する風切り族に殺されている。怖いと思う子どもがいても無理はない。何なら当然だと思う。

 だけどわたしは、アクセスが本当は優しい人だって知っているから。


(なんて、昨日は殆ど話せなかったんだけど)


 彼の仏頂面にめげたっていう理由もあるけど、あんまり喋りたくないように見えたのが理由だった。チラチラ目線は合ったから、何となく話したいことがあるのは分かっていたんだけど。


「わたしに会いに来たんですか?」

「……それ以外ないだろう?」


 問いかけに問いかけで返しつつ、アクセスは穏やかに目を伏せる。
 彼の物言いはキツイ。だけど、別に悪気があるわけじゃないんだと思う。前の人生でもこういう人はいたし、旦那様のお墨付きもあるから、あんまり気にはならない。


「ここは目立つから移動しよう」

「はい。だけど、どこに行くんですか?」


 家で話すつもりなら、わざわざこんなところまで迎えに来ないもんね。


「――――ついて来い」


 そう言って、アクセスは踵を返した。