「身体は? まだ痛むか?」


 旦那様はそう言ってわたしを座らせた。まだ離れたくない、なんて我儘を言わなくても、旦那様はわたしを抱き締めたまま。膝の上に座らせて、昨日怪我したばかりの足をまじまじと見る。


「痛みはもう、ありません」


 首を横に振りながらわたしは答える。すると、旦那様は言葉にするのが憚られるほどの神々しい笑顔で、わたしに向かって微笑んだ。


(あぁ~~~~~~、カッコいい! 素敵! もう、大好き!)


 声に出せないまま悶絶して、わたしは胸をときめかせる。今ここにカメラが有ったら、絶対、絶対写真に収めていたのに!持ち歩き用、観賞用、保存用でいっぱいいっぱい現像したのに!
 だけど、残念ながらここは異世界。わたしの知る限り、そんな文明の利器はない。魔法の使える魔族なら似たようなことが出来るのかもしれないけど、わたしは何の力もないただの人間に転生してしまった。それが、とてつもなく悔しい。