「この世界?」


 すると、ロイが不思議そうな表情でそう尋ねる。キョトンとした瞳があどけなくて、大変可愛い。


(いけない、いけない)


 わたしはあくまでアイリスで、前世の記憶があることは旦那様もロイも知る必要が無い。気を付けないと。


「ごめんごめん、言い方を間違えちゃった。お守りなんて初めて見たから」


 言い訳をしつつ撫でてやれば、素直なロイは「そうなんですね?」なんて言いながら首を傾げる。相変わらず滅茶苦茶綺麗な毛並みだし、ずっとモフモフしていたくなる可愛さだ。


「アイリス。その中には俺の逆鱗が入っている」


 その時、旦那様がそんなことを口にした。思わぬ言葉にわたしは目を丸くする。