(がーーん!)


 思わず心の中で叫び声を上げる。

 そんな! 目を逸らされてしまうぐらい、待ちくたびれてしまったんだろうか。もしかして、チビなのに準備に時間が掛かりすぎだって呆れられたのかもしれない。後悔とかショックとか、色んなものが一気に押し寄せる。


「アイリス様、可愛いです! よく似合っていらっしゃいますよ!」


 その時、ロイがそう言ってわたしの方に駆け寄った。ショックで打ちひしがれていたわたしは、ロイの一言で少しだけ気持ちが浮上する。


「そう? 良かった……でも、旦那様を酷くお待たせしてしまって…………」


 ごめんなさい、ともう一回口にして、わたしは俯いた。気を抜くと涙が零れ落ちそうだった。


(どうしよう……旦那様に嫌われたら、わたし生きていけない)


 こんなことなら気合入れて準備なんてしなければ良かった。普段通りに着飾って、旦那様の隣を歩けるだけでも十分幸せだったのに――――。