「ねぇ、ロイはどの服が良いと思う?」


 隣で機嫌よさげに尻尾を振っているロイに問いかけると、彼は首を小さく傾げた。


「うーーん、僕はどのお洋服もアイリス様にお似合いだと思います。リアン様の愛情がたくさん詰まっていますし」

「そうよね……本当。旦那様の愛情がたくさん…………」


 口にしてみて、それからすぐに後悔した。心臓がバクバク鳴り響くし、恥ずかしくて堪らない。本当、わたし愛されてるなぁ。


「旦那様はどの洋服が好みだろう?」


 咳払いをしながら、わたしはもう一度疑問を口にする。
 旦那様が選んでくれた以上、ここにあるのは全部彼のお眼鏡に適った洋服なんだけど、その中でもどれが旦那様の一押しなのか知りたい。


(前世でもなぁ、デートのたびにこうやって洋服選びに悩んだんだよねぇ)


 なんて、悩んでたのは本当だけど、その分だけわたしは幸せだった。
 着飾ったわたしを見たら、旦那様はどんな顔をするんだろう。可愛いって言ってくれるかなぁって想像するだけで楽しかったし、幸せだった。
 実際に『可愛い』って言葉にしてくれることは少なかったけど、嬉しそうな笑顔が、わたしを撫でる手のひらが、旦那様の愛情をしっかりと示してくれていた。


(あっ……)


 その時、一枚のドレスがわたしの目に留まった。
 どのドレスも素敵だけど、前世の記憶にある思い出の一枚に似たそれを、わたしは手に取って宛がう。


(これに決めた)


 ふふ、と笑いながら、わたしはゆっくりと目を瞑る。
 明日が来るのが、楽しみで堪らなかった。