(ソファで寝る……って十歳児が提案するのは変よね)


 そんなの、『旦那様を男性として意識してます!』って宣言するようなものだ。そりゃぁわたしは旦那様のことが大好きだけど、マセガキ認定されて、変に距離を取られたくはない。
 それに、そんな提案しちゃったら、心優しい旦那様の方がソファで寝ようとするのは必至。そんなの絶対嫌だ。


(やっぱり、何にも気にしていない風を装って無邪気に一緒に寝るってのが正解なのかなぁ)


 こういう時、前世の記憶があるって結構面倒だ。記憶がなかったら綺麗で優しい竜人様に甘えて、ギュッて抱き付いて、スリスリして……って十歳じゃもうそんなことはしないか。記憶が戻るまでのわたしって、案外自立してたもんね。
 それに、記憶があったからこそ旦那様のことを『旦那様』って認識できるんだし。
 まぁ、記憶が戻らなくたって旦那様のことを好きになったのは間違いないけど!


「アイリス」

「ひゃぁっ!」


 唐突に後から呼びかけられて、わたしは素っ頓狂な声を上げた。


「だっ、旦那様……」


 口にしながら、わたしの頬は真っ赤に染まっていた。どうしよう。もしもわたしが何考えてたか旦那様に悟られたら、きっと恥ずかしくて死んでしまう。


「おまえの部屋を準備したんだ。付いておいで」

「へ?」