本当は、きずな君の記憶を見たあの日からずっと、方法は一つしかないって分かっていた。だけどわたしは誰かに『頑張れ』って――――『大丈夫だよ』って、背中を押してほしかったんだと思う。


「ええ、きっと。あなたなら大丈夫よ」


 そう言って、ミセス・カルバートはわたしのことを抱き締めてくれた。
 あの日からずっと堪えていた涙が一気に溢れ出る。

 前世できずな君を死なせてしまった――――わたしには無理なんじゃないか――――そう思うと、ずっと自信が持てずにいた。

 だけど、前世と現世は違う。

 今のわたしは『アイリス』で、旦那様は旦那様だ。
 同じ道を辿ると決まったわけじゃない。ううん――――わたしが絶対、変えて見せる。


「……また、来ても良いですか?」

「ええ、もちろん。今度は旦那さんも一緒に、ね」


 ミセス・カルバートはそう言って笑う。
 わたしは大きく頷きながら、笑顔を浮かべた。