「元気? アイリスちゃん」


 その日の午後、校門でわたしを待ち伏せしていた人物がそう言って笑った。
 ニコラスだ。


「うーーん、まぁまぁ、かな?」


 曖昧な笑顔でそう返すと、ニコラスはわたしの頭をポンと撫でる。

 学校の友人達に、旦那様のことは話していない。屋敷でお世話になっていることとか、ロイのこととか、そういうことは話しているけど、異種族間での恋愛はこの世界でも一般的ではないからだ。
 だから、わたしが今回のことで本音を打ち明けられるのは、ニコラスとアクセスの二人だけだった。


「それで? 今日はどうしたの?」


 わたしが尋ねると、ニコラスはニッと不敵な笑みを浮かべる。


「アイリスちゃんをデートに誘いたいなぁ、と思って」

「まぁたそんな言い方して……旦那様に殺されちゃうよ?」


 彼が本気じゃないのは分かってるけど、旦那様はわたしに関することだったら冗談だって許さないもの。


「――――会わせたい人がいるんだ」


 ニコラスはクスクス笑いながら、わたしの手を引く。