「アイリス」

「はい」

「明日以降も、俺のために食事を作ってくれるか?」


 神々しいほどに旦那様の笑顔が輝く。一瞬、なにを言われたのか理解が追い付かなかったけど、わたしの頬はみるみる内に真っ赤に染まる。


(それって、それって……!)


 旦那様の言葉を頭の中で反芻して、悶絶しながら、わたしは何度も何度も激しく頷いた。

 嬉しい。どうしよう。嬉しすぎて心臓が痛い。
 だって、これじゃまるでプロポーズだ。『毎日おまえの味噌汁が飲みたい』みたいな。少なくともわたしにはそんな風に聞こえる。名実ともにってわけにはいかないけど、実質やってることは妻と変わらない。

 わたしが成人するまであと五年。それまでの間、わたしは何としてもここに居座って、旦那様の妻の座を正式に勝ち取らなきゃならない。
 これだけは――――旦那様の妻の座だけは、絶対、誰にも譲ることができない。だからわたしは、旦那様にとって誰よりも魅力的な女の子になる。前世みたいに、めちゃくちゃ愛される妻になってやるんだ、って胸に誓う。


「お任せください! このアイリス、精一杯頑張ります!」


 ねぇ、旦那様。これはわたしの宣戦布告。
 絶対絶対、わたしは現世でもあなたの妻になるから。


「頼んだぞ」


 そう言って穏やかに微笑む旦那様に、わたしは満面の笑みを浮かべた。