「あ…………あぁ………………!」


 けれど、次の瞬間、俺はその場に崩れ落ちた。

 部屋の真ん中で眠っていたのは間違いなく逢璃だった。誰よりも可愛くて、誰よりも美しい、俺の最愛の人――――決して見間違えるはずがない。

 逢璃は俺の腕の中で眠る時みたいに、安らかな顔をしていた。けれど、俺を見て薔薇色に染まる頬が、今は生気を失って青白い。「きずな君」と俺の名を呼ぶ唇が、石みたいに冷たかった。


「逢璃? ――――逢璃?」


 名前を呼ぶのがやっとだった。呼べば逢璃は起きてくれると――――俺の名前を呼んでくれると思っていた。いつもみたいに「きずな君」と。そう言って笑ってくれると信じていた。

 けれど、何度呼んでも、どれだけ抱き締めても、逢璃が俺に応えることは無い。


「逢璃!」


 俺、ようやく逢璃の旦那様になったんだよ? これから逢璃を幸せにするって。誰よりも幸せにするって誓ったのに、何一つ果たせていない!

 涙で前が見えなかった。小さな部屋に俺の慟哭が響き渡る。涙と一緒に瞳も、身体も、全部崩れ落ちて無くなってしまえば良い。喉から身体が裂けてしまえば良いと、心から思った。