「こんなに――――こんなにきずな君が好きなのに。きずな君だけが好きなのにっ。他の人の所に行くわけない。好きになるわけない。きずな君の馬鹿!」


 そう言って逢璃は俺を抱き返した。身体が小刻みに震えている。俺と同じかそれ以上に熱い。小声で何度も「きずな君が好き」と繰り返し、逢璃は俺に縋り付く。


「ごめん、逢璃」


 言いながら、瞳から涙がこぼれ落ちた。
 俺はきっと、逢璃のことをちっとも理解できていない。逢璃はちゃんと、俺のことを想ってくれてる。きっと俺と同じかそれ以上に。怖がって、知ろうとしなかったのは俺の方だ。


「ねぇ……今夜、逢璃の部屋に泊めてくれる?」


 囁くように問い掛ければ、逢璃は耳まで真っ赤に染めて俺を見上げる。

 己の欲を見せる怖さが完全に無くなった訳じゃない。
 けれど逢璃ならきっと受け入れてくれる。何よりも、俺の想いをしっかり伝えたいと、そう思った。


「――――うんっ! 楽しみにしてる」


 逢璃はそう言って、泣きながら笑う。
 あまりの愛おしさに、俺は彼女と一緒になって笑うのだった。