「見て、きずな君。綺麗だね」

「うん……すごく、綺麗だ」


 観覧車の窓から外を見つめながら、逢璃が笑う。だけど俺は、外じゃなくて逢璃のことばかり見ていた。
 夕陽に照らされた逢璃は綺麗で、俺を堪らない気持ちにさせる。
 俺はそっと逢璃に手を伸ばした。逢璃は少しだけ目を丸くしつつ、俺の手のひらを受け入れる。そのままギュッと抱き寄せると、胸一杯に甘さと温かさが広がった。


「好きだよ、逢璃」


 ありったけの想いを込めて、そう口にする。すると、逢璃は「わたしも」と小さな声で呟いた。多幸感で胸が疼く。


「逢璃、こっち向いて」


 言えば逢璃は、俺の腕の中でくるりと回った。頬が紅い。吸い寄せられるように唇を寄せると、逢璃は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。


「嫌?」


 苦笑交じりに俺が尋ねる。逢璃は首を横に振って、俺のことをそっと見上げる。


「嫌なわけ、ない。すごく嬉しい。でも」


 躊躇いがちに視線を彷徨わせ、逢璃は眉間に皺を寄せる。


「唇の方が良い」


 そう言って逢璃ははにかむ様に笑う。
 そんなことを言われて、平常心でいられるわけがない。