逢璃は終始、楽しそうに笑っていた。
 ジェットコースターやコーヒーカップ、メリーゴーランドに乗ってはしゃぐ姿は、幼い子供のようで。けれど、そんな彼女の素を見られることが、俺はとても嬉しかった。

 逢璃と一緒なら何でも楽しい。そのことを実感した。

 昼食は店に入るつもりだったけど、逢璃が早起きしてお弁当を作ってくれていた。集合時間が早かったし、急なことだから大変だっただろう。けれど、逢璃はそんな素振りはちっとも見せない。


「きずな君のお口に合うか分からないけど……」


 緊張しているらしく、逢璃はソワソワしながら俺を見つめていた。


(逢璃が作ってくれたってだけで嬉しいのに)


 そう思いつつ、俺は一口、逢璃の作った卵焼きを口に運ぶ。


「美味い……」

「本当っ⁉ 本当に⁉」


 逢璃が嬉しそうに身を乗り出す。
 絶対、どんな味でも美味しいって言おうと決めていた。だけど、そんな必要は全くなく、本当に自然に言葉が口を吐いて出た。
 これまで食べた何よりも、美味しく感じた。


「美味しいよ。本当に、すごく美味しい」


 口にしながら、俺は他のおかずも口に運んでいく。そのどれもが、まるで俺の身体に染み入るように美味い。逢璃は甲斐甲斐しくお茶を注ぎつつ、俺の顔を見つめている。