変化が訪れたのは、高校2年生の頃。昼食後、俺のところに来るのが日課になっていた逢璃が、その日は来なかった事が理由だった。


(一体、何処にいるんだろう?)


 別に約束をしているわけじゃない。2年になってからはクラスも別だし、本当なら毎日会話をしていることが不思議なぐらいだ。
 そう思いつつ、何度も何度も、教室の扉を確認しては落胆する。あまりにも落ち着かなくて、気づけば俺は逢璃を探して校内を彷徨っていた。


「――――好きだ」


 そんな声が聞こえてきたのは、体育館の裏に差し掛かったその時だった。


(今時、こんな場所で告白か)


 ひどく冷めた気持ちで男の声を聞きつつ、小さくため息を吐く。
 けれど、踵を返そうとしたその瞬間、心臓が止まるかと思った。


「ごめんなさい」


 高く、涼やかな鈴の音のような声に心が抉られた。
 そっと覗き込むと、そこには予想通り、俺の探し人がいた。逢璃だ。


「好きな人がいるの」


 もう一度「ごめんなさい」と言って、逢璃は頭を下げた。