「そっ……それで、お話って? 旦那様に一体何があったんですか?」


 アクセスとニコラスは静かに顔を見合わせる。本当は怖くて、逃げ出したくて堪らない。必死に心を奮い立たせながら、わたしは二人の言葉を待った。


「昨日――――リアンが俺達二人に頼み事をしてきた」

「頼み事?」


 アクセスはゆっくりと、言葉を選んでいる様子だった。その表情から苦悩と戸惑いが見て取れる。心臓がバクバク鳴り響いた。


「一体、何を頼んだんですか?」


 悪い内容であるのは間違いない。何度も唾を呑み込んで、わたしは二人を交互に見遣る。ニコラスがわたしを見つめ、静かに口を開いた。


「殺してほしい」


 ――――え?

 ニコラスの声が静かな神殿に木霊する。時間が止まってしまったんじゃないか。そう錯覚するほどに、身体の感覚が無くなって、わたしは声すら発することができない。


「殺してほしいと――――そう、リアンに言われたんだ」


 ニコラスがもう一度、静かにそう口にする。わたしは目の前が真っ暗になった。