「もちろん。だけど――――俺は男だから」


 そう言って旦那様は目を細めた。瞳の奥に妖しげな光りを潜ませて、旦那様は笑う。
 いつもみたいな穏やかな笑みじゃない。どこか切迫した、飢えた獣みたいな表情だ。

 旦那様がわたしの唇を指でそっとなぞる。グルルと音を立てて旦那様の喉が鳴る。
 心臓を鷲掴みにされたみたいだった。まるで今にも食べられてしまいそうな、そんな感覚に身が竦む。


 きずな君と旦那様は同じ魂を持っている。それは絶対、間違いない。
 けれど、二人は違う人間だ。そのことを今実感した。


(旦那様は、雄だ)


 その身の内に荒れ狂う『竜』を飼っている。そう思うと、旦那様のことがまるで知らない男性のように見えてくる。