「アイリス」


 だけど、わたしの予想は思い切り――――良い意味で外れた。

 旦那様はなんと、わたしのことをギュッと抱き留めてくれたのだ!

 その途端、背中を快感が駆け巡る。あまりの温かさと、久方ぶりに味わう旦那様の香り。心臓がドキドキと鳴り響き、胸がぎゅーーーーって締め付けられる。
 どうしよう。信じられないぐらい嬉しい。涙がぶわっと溢れた。


「迎えに来たよ」


 旦那様が甘やかにそう囁く。身体が一気に熱くなって、自分で自分を支えてられない。しがみ付く様にして顔を上げると、心臓がひと際大きく跳ねた。

 旦那様が切なげな、愛し気な顔をして笑っている。見ているこっちが苦しくなるような、すっごい破壊力を持った表情だ。


(こんなの絶対反則だ!)


 振り返れば、ニコラスとアクセスが何とも言えない表情で笑っている。思わず頬が熱くなった。


「だから言っただろう?」


 ニコラスはそう言って、ニヤリと口角を上げる。
 その瞬間、二人が言っていたのはこのことだったのか、とようやく察しが付いた。