(旦那様にギュッてしたい)


 あのミントみたいな香りを力いっぱい吸い込みたい。優しくて逞しくて温かい身体に目一杯抱き付いて、スリスリして、大好きって言いたい。大好きって言われたい。

 旦那様がわたしに対して抱く愛情が、わたしと同じ愛情だってそう思いたい。
 だけど、出会った時が幼女だったから、家族愛とか親愛とか、そういう感情の方が大きくなっている可能性は否めない。五年も養女として育ててくれたんだもん。急に恋愛感情に切り替えるなんて、実は難しいことなのかもしれない。


(でも、結婚するって約束したもの)


 旦那様に愛されている。そのこと自体は間違いないと思う。
 だけど、たとえこのまま結婚したとして、触れてもらえないんじゃどうしようもない。家族としてしか接してもらえないなんて、そんなの嫌だ。


(何とかしなきゃ)


 そんなことを考えながら、わたしは食卓へと向かう旦那様を見つめた。