「わたし……これから先も、旦那様の側に居て良いんですか?」

「居てくれないと俺が困る。
もう、誰にも何も言わせない。俺はこれから、誰よりも何よりも強くなる。アイリスを守り抜けるように――――――アイリスの一番になれるよう、死力を尽くすとここに誓う」


 旦那様はそう言って、わたしの手の甲に口づける。


「わっ……わたし、まだ子どもですよ? それなのに、こんな約束しちゃって良いんですか? 本当にわたしをお嫁さんにしてくれるんですか?」


 子どもに贈るにはあまりにも熱く、真剣な想い。間違ってた、なんて言われても、今更撤回させる気なんて無い。
 それでもわたしは、確かな言葉が欲しかった。約束が欲しかった。


「もちろん。待つよ。アイリスに出会うまでの百年間に比べたら、五年なんて一瞬だ」


 旦那様は優しい顔をして笑っていた。堪えきれず、感情のままに旦那様に抱き付くと、旦那様はわたしのことをギュッと抱き締めてくれる。


(全部、きずな君の言う通りだった)


 温かい涙が頬を濡らす。
 きっと、これから先もたくさん、たくさん不安になるんだろう。どれだけ言葉を尽くしても、刻一刻と現実は変わっていく。その全てに対応できる言葉なんてない。

 だけど、わたしはきずな君と――――旦那様と約束した。現世でも絶対、旦那様のお嫁さんになるって。そう約束した。
 だからもう、大丈夫。


『絶対、絶対、現世でも一緒になろうね』


 心の中で誓いの言葉を口にする。
 それからわたしは満面の笑みを浮かべたのだった。