わたしの提案に、ロイは喜んで賛成してくれた。
 良かった。自分の仕事を取られるって思われたら大変だなぁって思ってたけど、そんな心配は無かったみたい。
 わたしはベッドから降りて、すぐにキッチンへと向かった。

 幸いなことに、この世界の食材は前世の食材と殆ど同じだった。わたしたちがいる国の主食はパンだけど、ちゃんと米も売られているし、調味料なんかも充実している。そりゃあ、まったく同じではないけど、旦那様が好きだった和食に近しいものが作れる程度には、選択肢が充実していた。


「足りないものが有ったら言ってください。僕が買いに行きますから」

「本当? 助かるなぁっ」


 キッチンに立ちながら、わたしはウキウキしていた。


(嬉しいなぁ。また旦那様にご飯が作れるんだ)


 瑞々しい人参、玉ねぎなんかを手に取りながら、わたしは声を上げて笑う。
 わたしにとって、旦那様にご飯を作る時は、至福のひと時だった。
 どんな顔をして食べてくれるだろう。美味しいって言ってくれるだろうか。そんな風に想像するだけで、幸せを二倍も三倍も味わえる。
 失敗しちゃうこともあったけど、旦那様はそれでも『美味しい』って言って食べてくれた。そんな旦那様の優しさが大好きだったから。


(うん……きっと今回も喜んでくれる)


 旦那様の顔を思い浮かべながら、わたしはひとり笑みを浮かべた。