「ねぇ、きずな君……わたしが大人になるまで、旦那様、待っててくれるかなぁ?」


 ポロポロと涙を流しながら、わたしは笑う。きずな君がせっかちだって言うなら、旦那様だってせっかちなはずだ。わたしが大人になるまで、あと五年。その間待っていてもらえるのか、不安が無いっていったら嘘になる。
 すると、きずな君はわたしと同じように笑い、力強く頷いた。


「大丈夫。俺が逢璃以外を好きになるなんてあり得ない。俺のお嫁さんは、逢璃以外いないんだよ」


 温かな眼差し。確信に満ちた表情。
 涙が零れ落ちる。


「……そっか。だったらわたしは、可愛いお嫁さんになれるように頑張らなきゃだね」


 そう口にしながら、わたしは笑う。
 額や頬、唇を、きずな君の唇が優しく撫でる。


「好きだよ、逢璃。俺はずっと、逢璃の側に居る。逢璃だけを愛してるよ」


 きずな君の言葉に笑みが零れる。


「わたしも、ずっと、ずーーーーっと、きずな君が大好き!」


 きずな君は少しだけ目を見開いて、それから潤んだ瞳で微笑みながら、わたしを抱き締めた。


(ありがとう、きずな君)


 温かな気持ちに包まれながら、心の中でそう呟く。涙のせいで視界がブレる。
 旦那様ときずな君の影がさっきよりもピタリと重なって、わたしはゆっくりと目を瞑る。


「――――アイリス!」


 わたしの名前を呼ぶ声。
 目を開けると、わたしは旦那様の腕の中にいた。