「知る必要はない。どこにいようと、どうなっていようと、おまえがアレと関わることはもうないのだから」

(ゲス野郎)


 リアンはすかさず剣を振る。けれど、父にとっては想定の範囲内だったらしく、リアンの渾身の一撃はさらりと受け流された。


「実の父親に向かってその態度は何だ? 少しぐらい話をしようという気は――」

「ない」


 心臓が、身体が、燃えるように熱い。沸々と湧き上る怒りがリアンを突き動かす。ありったけの魔力を込めて剣を振るう――――けれどリアンの父親は、ニヤリと余裕のある笑みを浮かべた。


「ならば勝手に話をしよう。
あの小娘は邪魔だ。竜人族のおまえが人間を拾うなど、愚かにもほどがある。おまえは竜人族の――――すべての種族の頂点に立つ男だ。それなのに、あんな下等種族を飼うだと? 挙句の果てに、こんな所にまで乗り込んでくるとは嘆かわしい。たかが人間の少女一人に囚われてどうする?」


 リアンの猛攻をいなしながら、彼は平然とそんなことを言ってのける。


「たかが?」


 返しつつ、怒りで身体が弾け飛びそうだった。