「――――俺も一緒に連れてきなよ。あんまり戦闘向きじゃないけど、そこそこ強い方だよ?」


 ニコラスはそう言って自分を指さす。リアンは小さく首を横に振った。


「良い。おまえはロイの側に居てやってくれ。それから、もしも俺に万が一のことがあったら、ロイのことを頼みたい」


 ニコラスは深いため息を吐きつつ「了解」と小さく呟く。今度こそリアンを止められないと悟ったのだろう。眉間に皺を寄せ、真顔で彼のことを見つめる。


「ちゃんと帰って来いよ。アイリスちゃんも連れて、さ」

「ああ」


 けれど、リアンがこの家に帰ってくるのは、アイリスが無事な時だけだ。
 ニコラスにもリアンの決死の覚悟が伝わっているのだろう。死ぬな、とは一言も言わない。


「じゃあ、行ってくる」


 リアンは今度こそ、力強く地面を蹴った。