「――――ロイ、一つだけ聞いても良いか?」


 尋ねれば、ロイはビクッと身体を震わせつつ、コクリと頷く。アイリスを守れなかったことを相当気に病んでいるのだろう。表情は依然、暗いままだ。


「襲われたとき、アイリスは俺の渡したお守りを身に着けたままだったか?」


 しばしの沈黙。ロイはやがて躊躇いがちに小さく頷く。リアンはゴクリと唾を呑んだ。


「アイリス様はご自身の懐に、リアン様のお守りを大事に仕舞っていらっしゃいました。落とせばすぐに気づくでしょうし、攫われる時に奪われた様子もありません。今も身に着けていらっしゃるに違いありません」

「……そうか」


 答えつつ、リアンはそっと目を伏せる。ざわざわと胸が騒いだ。


「え? なに? お守りって、一体なにを渡してたの?」

「俺の逆鱗」

「……うわぁお」


 ニコラスは目を丸くする。彼が驚くのも無理はない。逆鱗なんて大事なもの、普通は誰かに渡したりしない。
 けれど、これでハッキリした。


「ってことは、アイリスちゃんを攫ったのはおまえと同等以上の手練れってことか――――」

「……そういうことだ」