「――――君が一番見たいものを見せてあげよう。何を望む? 亡くなった両親と生きる未来かな? 何でも良いよ。全ては君の望むとおりだ」
男の手のひらの隙間から、涙が零れ落ちていく。胸が痛いし、息ができない。
かと思えば、苦しさは次第に薄れていき、楽になる。少しずつ少しずつ、身体の感覚が奪われ、消えていく。怖くて怖くて堪らない。
「大丈夫だよ。君は命の灯が尽きるその日まで、夢の中で生きてくれればそれで良い。リアンは私が決めた通りにミモザ殿と結婚し、我が一族は繁栄する。そんな現実、君は見る必要ないんだ」
「旦那様が、ミモザさんと結婚する……?」
言いながら、心臓が直接握りつぶされたかのような心地を覚える。
これまで辛うじて保っていた自分という存在が崩れ落ちていく。身体なんて存在しない。感情以外の全ての感覚が、一気に消えていくのが分かった。
「そうだよ。ミモザ殿はリアンの婚約者。二人は愛し合っているんだ」
男の声がダイレクトに響く。
きっと今、わたし涙を流している。けれど、瞳も、涙を伝う頬だって、もう存在していないのかもしれない。そう思うくらい、わたしにはもう何も残っていなかった。
男の手のひらの隙間から、涙が零れ落ちていく。胸が痛いし、息ができない。
かと思えば、苦しさは次第に薄れていき、楽になる。少しずつ少しずつ、身体の感覚が奪われ、消えていく。怖くて怖くて堪らない。
「大丈夫だよ。君は命の灯が尽きるその日まで、夢の中で生きてくれればそれで良い。リアンは私が決めた通りにミモザ殿と結婚し、我が一族は繁栄する。そんな現実、君は見る必要ないんだ」
「旦那様が、ミモザさんと結婚する……?」
言いながら、心臓が直接握りつぶされたかのような心地を覚える。
これまで辛うじて保っていた自分という存在が崩れ落ちていく。身体なんて存在しない。感情以外の全ての感覚が、一気に消えていくのが分かった。
「そうだよ。ミモザ殿はリアンの婚約者。二人は愛し合っているんだ」
男の声がダイレクトに響く。
きっと今、わたし涙を流している。けれど、瞳も、涙を伝う頬だって、もう存在していないのかもしれない。そう思うくらい、わたしにはもう何も残っていなかった。



