「わたし――――旦那様と一緒にいたいです」


 嗚咽が漏れる。
 旦那様の綺麗な洋服が涙でぐちょぐちょになっている。
 だけど、旦那様はわたしを放しはしなかった。「俺もだよ」って口にして、旦那様はわたしをギュッと抱き締める。


「出来る限り早く、アイリスの待つ家に帰る。だから、待っていてほしい」


 その瞬間、涙がじゅわっと込み上げて、わたしは声を上げて泣いた。

 旦那様が『わたしの待つ家』って言ってくれたことが嬉しくて堪らない。それを準備できるのは、この世の中でただ一人。わたしだけだ。

 コクコク必死で頷きながら、わたしは旦那様を抱き返す。
 嬉しかった。とてもとても、嬉しかった。