「今更だけれど、家内のことでは蘭に迷惑をかけてすまなかったな」
運転席でまっすぐに前を見ながら、順が謝ってくれる。

「もういいよ。当時は恨んだりしたけれど、自分が逆の立場ならって思えば同じことをしないとも限らないもの」
「そうか?」
「そうよ」

きっと奥さんは順のことがとっても好きなのよ。
だから不安なんだと思う。

「うちの嫁って、6歳年上なんだよ」
「へえー」
知らなかった。

写真で見る限りでは年上って印象ではなかったけれど。

「俺が小学生の頃自分は高校生だったっていうのが口癖でね、気にするなって言うのに聞かないんだ」
「そうなのね」
それって、わかる気がする。

奥さんなりに不安を感じていたのよね、きっと。

「忘れてくれって言うつもりは無いけれど、俺に免じて勘弁してくれ」
「もう、いいって」

全ては過去の出来事、今はもう恨む気持ちはない。

「俺が言うのもおかしいけれどさ、宮田はいい男だぞ。御曹司だってだけじゃなくて、仕事もできるし、ちゃんと周りが見えていていい社長になると思う。将来取引先の社長になる予定の俺が言うんだから間違いない」
「そうね」
私もそう思う。
「お前のことも真剣だと思う」
「そうかなあ」
それは、よくわからない。

「とにかく、逃げずに話すんだな」
「うん、ありがとう」

会社から家までの20分ほどの時間、久しぶりに順と話をして私はマンションの前で車を降りた。