ーまたこの季節だ。うるさくて、じめじめして、外に出られない。こんな嫌な時期がほかにあるか。
はあ、と大きなため息をつく。このため息も今日で何回目だろうか。いらいらしながら今日も嫌な教師のつまらない授業を受ける。ただただチャイムが鳴るのを待ち続ける。いつもならそれだけでいいのだが、低気圧で頭が痛い。保健室に行きたいが声に出すのもだるく感じるのでずっとうつ伏せになりながら放課後のことを考える。
「おい!紫月!起きろ!!」
そんなに近くで叫ばれると頭がズキズキする。無視を貫く僕と隣でギャーギャー騒ぐ教師。
「無視をするな!!」
また叫ばれイラついた僕は、
「…頭が痛いので早退します‼」
と言い放ち、ぽかんとする先生を置いて荷物をまとめ教室を出る…が、外は今までにないくらい強い音を奏でて降り注いでいる。
「…めんどくさ。」と、ポツンとつぶやく。階段で響く声、雨の音が妙に気持ち悪い。まさに不協和音だ。後ろで騒ぐ教師の怒号が聞こえる。うるさい。授業中なんだから静かにしたほうがいいのに。
「谷町先生、少し静かにしてもらえませんか?生徒たちが迷惑してます。」
あ、隣のクラスの先生に怒られてる。もう少しこの珍しい光景を眺めていたい気もするが、バレてつかまりでもしたら面倒だ。さっさと逃げよう。
校門の前に着いたはいいが、今日はあいにく傘を持ち合わせていない。どうしようかと悩んでいる矢先、
「紫月!見つけたぞ!」
…どうやら考えてる暇なんてなさそうだ。明日のことは明日考えるとして、今はとにかくこの監獄から逃げ出すことだけ考えよう。雨が目に入るからずっと目を細めて走っていたら、ようやく駅に着いた。さすがにここまで教師は追ってきてはいなかった。今は平日の朝十時。田舎のこんな小さな町の小さな駅のプラットホームに、僕以外の人なんてどこにも_と思っていたら、青と白のさわやかなワンピースを着た青髪の女子が一人、待合室でペットボトルのアップルティーを飲んでいた。
「…遅刻か、早退…か?」
その女子は僕を見るなり遠くから
「キミ、もしかして早退?」
と叫ばれたから小さくうなずくと、やっぱり、みたいな顔して近づいてきた。