「なんでそばに居ないのよ…」


「何言ってんのかなちゃん。僕はここにいるよ」


なんて返事をしても彼女には届いていないみたいで


「約束したのに」


か細い彼女の声だけが僕には届いていた。


僕はここにいるのに、どうして彼女は僕に気づかないんだろう。


セミの鳴き声のせいで僕の声がかき消されているのだろうか。


「かなちゃー…」


もう一度彼女に触れようと手を伸ばした時だった。


「どうして、死んじゃったの……っ」


彼女の泣き声とともにそう聞こえた。