線香花火



「かなちゃん」


分かってる。聞こえないってことくらい。


だけど、期待してしまうんだ。


もしかして彼女なら気づいてくれるんじゃないかってこと。


これが悪い夢で、まだ目が覚めてないんじゃないかって。


そんな期待がずっと僕の頭の中をグルグルしている。


気づけば握りしめていた線香花火はクシャクシャになっていた。