線香花火



約束した日。


僕はいつも通り線香花火をもって彼女の家に向かおうとしていた。


時間も伝えてるわけでもなく、ただ約束だけをしただけの日。


「母さん、行ってくるね」


その日も暑い日だった。


セミの鳴き声が四方八方から聞こえてきて、地面からは熱気が伝わってくる。


肌には日差しが痛く当たって、思わず目を細めてしまうほどまぶしい。


そんなこと今の僕にはどうってことない。


ただ、彼女に早く会いたくて、気持ちを伝えたくて。


……彼女とまたお願い事をしたかった。