「すいません、ちょっとしんどくて」



お昼ご飯を食べたあと、あまりにも身体がしんどくて保健室に向かった。


 
「熱はかってみよっか」



保健室の先生に体温計を渡され、脇に挟む。


朝起きたときから、身体がだるかったけど気のせいだと思って放っていたらいつの間にか立つのもしんどくなっていた。


ーーーーピピピ


脇に挟んでいる体温計から音が鳴り、服の中から取り出してみると38.5と表示されている。


保健室の先生に渡すと、「保健室で休んで行って」と言われ、私はベッドに横になった。



「先生は今から、職員会議に行ってくるからゆっくりしててね」


「分かりました」



カーテンが閉められ、私は毛布に包まった。


保健室には私一人で人の目を気にしなくて済むから
目をつぶる。


それもつかの間、ガラガラと保健室のドアが開けられ誰かが入ってきた。


窓から保健室に風が吹き込む。


先生に閉められたカーテンが揺れ、入ってきた人の顔が隙間から見える。


太陽の光が当たり輝く髪の毛、スッとした鼻筋。


朦朧(もうろう)とした意識の中、私は彼を見た瞬間に恋に落ちた。


今にも消えてしまいそうな儚い雰囲気をまとっている彼があまりにも綺麗だったから。



「あの!あなたは?」



熱があるのを忘れたようにベッドから身体を起こした。



「……佐江爽。君は?」


「ほ、星野雪花です」



喋れたことの嬉しさで自分の名前を言うのがやっとだった。



「雪花ね」



名前を呼ばれるだけで、胸がドクンと高鳴る。



「……はい」



初恋はまだ、始まったばかり。


同じ学校の学年も分からない、好きなものも知らない、一目惚れの初恋。


仲良くなりたい、私は声をあげた。



「あの、友達になってくれませんか?」



的外れなことをきっと言っている。


でも、今の私にはこれが精一杯だった。



「いいよ」

  
彼は微笑む。


そして、私はその笑顔に釘付けになった。


好きだな、と思った。





                 END