断片集


そいつは、驚いたような声をあげた。
少し、辛そうだった。
そんな顔をどうせするのだから、黙っておきたかったけど。
今日は、一体どうしてしまったのだろう。
今からフラグでも立てるのかってくらいに、なんだか感傷的になっているようである。
「いつ、ここから消えても。この世界から消えても、いいやって、思ってたし、最後の記念にしようと思ってたし。終わりたいのに、なかなか終われなくなるよね、下手に誰かと関わるとさ。せっかくの『記念品』が、おかげで全然記念品じゃなくなっちゃうじゃない」
ぼくが言うと、そいつは悲痛そうに顔を歪ませる。
「よく、無いだろう?」
いいよ。
だって、現実に現実感が、無くってね。
ずっと、ふわふわしてた。漂っているみたいな毎日だった。
人は一人だ。一人だけど、それは沢山居る。でも、つらかったな。苦しかったな。
「気にしないで欲しくって、言わないように、するつもりだったのに……きみがあまりにも、こっちの話を、ちゃんと聞いてくれないから。感じてくれないから。なんか、悔しくなってしまったよ」
「…………」
何を、思っているのだろう。よくわからない。
「ぼくが傷付いても、放って置いて欲しいんだ」
「        」
掠れた声で、そいつは呟く。なんて言ったのか、よくわからない。

「『自分が傷付くときは、その前に誰かを傷つけているのかもしれない』これは、おばあちゃんが言っていた言葉だ。誰かに、無意識に言った何かや、行ったことが、やがては自分への反応に返ってくるから、気をつけなさいってこと」
「…………」
「だから、ぼくが勝手に泣いたり喚いたりすべきなのかわからない。もしかしたら、この状況だって、なにかの『報い』なのかもしれない。誰かが、傷付いたかもしれない。だから、こんなに苦しくなる必要がぼくにはあるのかもしれない。もしそうなら、それを誰かにぶつけるのはおかしい」