あれ。
一度目を覚ましたはずなのに、また目を覚ました?
なんだかよくわからない。
そばに、ナツが立っていた。船は、少し波のある場所にいるからか、微妙に揺れている。
「どうかしたのか」
目の前の人物は、ぼくに不思議そうに聞いている。
ここは、客室の、ひとつ。だと思う。少しお洒落なホテルみたいな内装だった。
「いや、お前の秘蔵過去を思い出しただけ。いやぁ、あれは……やばい」
ぼくが、寝ていたベッドから布団をはがして起きると、備え付けてあるらしき丸椅子に座りながらそいつがじとーっとこちらを見る。
「俺の秘蔵過去を思い出すような夢をなんでお前が見るんだ。やばいんだ?」
冗談だよ、冗談。
「っていうか、ぼくは今先ほどまで走っていませんでしたか」
「ええ、今先ほどまで走っていたけど、急にばたんと倒れてしまったので、古里さんは次のステージに行くらしいし。偶然通りかかった俺が、代わりに看ているというわけですね」
「成るほど、左様ですか」
「ええ。で、何、軽い脳震盪みたいな?」
「うーん……やっぱりさっき古里さんにぶつかったのが効いたのかな……」
「うわ、それ大丈夫か」
「たぶんね」
なんだろう。ふわふわしているらしい。真から電話が来たのも夢だったのだろうか。
ぼんやりした頭で、ぼくは言う。
「ごめんね傷付いて」
お前が泣くな、と怒られたのを思い出しながら言う。
ぼくはたぶん、傷付いてはいけなかったのに。
「え?」
そいつは、きょとんとしている。
「言うつもりは、無かったんだよ。これは、黙っておこうと思っていた。そしたらきっとぼくだけが悪いことになって、それで全部終わってもらえると思ったんだ」
そいつは。
表情を変えない。
台詞だけでは伝わらないほど、強がっていることまで、ばれているのかもしれない。
「やめて欲しいというのは、単に、もう構わないで欲しいんだ。そしてぼくから解放されて、好きにして欲しい。きっとぼくは、勝手に傷付いて行ってしまうから。ぼくが傷付いていると、誰かが怒る、でも、状況を上手く伝えられない。だからますます困らせてしまう。でもぼくは自分がどう傷付いていても、それをやっぱり上手く表せない。そういうものだから、だから耐えようと思ったけど、やっぱり、そばに居ないのが、一番だよ。誰にとっても」
「なんで、そんなに、自分に引き受けるんだ?」
「だって、ぼくは、なれているから」
「慣れているって、そんな!」



