――道の途中で、古里さんとぶつかった。
ぼくが頭を押さえていると、ピンクのワンピーススタイルの彼女は『あ、ごめん』と謝り、それから言う。「誰に見られているかわからないでしょ?」
「えー。でも、そんなの自意識過剰だって、思いますけどね」
彼女の眉がやや釣りあがる。
「ぼくみたいに、それほど有名人とか興味ない人も居ますし。歌が好きだからって作曲者に会いたいのか、アイドルに会いたいのかって、分けたらまた違う話になってしまいます。歌だけがすきだって人も居るでしょう。それもまた、当然」「私に会いたいに決まっているでしょ」こめかみをぐりぐりされた。痛い……「でも、有名だからって、みんながみんな興味を持つわけでもないですしー。ぼくも帰りたーい」
「よろしい。喧嘩を売りたいわけね?」
追いかけられて、ぼくはぱたぱたと廊下を走る。
「わーこわーい」



