断片集


「っていうか、今の状況でするのは俺の心配の方なのか」
「……お前の心配なんかしてない」
「ああそう」
「海で撮影するスタッフの心配だ」
「そっちに配慮してるの!?」
「放っておいて」
「んなこと、言っても」
「もし……ここから落ちたら?」
「そんときはそんときだろ」
その強さは、ぼくには無かった。
お前は少しバカになるべきだ、と、誰かが言っていた。
そのとおりだった。でも怖かった。少し、前に踏み出せる気がした。
階段に足を乗せた。
…………数秒で後退した。
「……無理です」
無理でした。
「無理ですか」
ナツが残念そうにぼくを見て、やがてこちらに手を伸ばす。
引きずるらしい。
ぼくは諦めて付いていく。
「何かあったら一緒に泳いでください……」
「了解」
ナツに引きずられて、結局乗船した。

(ちなみに後日どちらも泳げないことが判明した)


◇◇