「……なんか……
 すごく身体が重い」


 お母さんとメッセージのやりとりをしている。
 その途中からベンチに座っているのだけど。
 そのときは大丈夫だった。


 だけど。
 お母さんとメッセージのやりとりをしなくなったとたん。
 突然、異常なくらいの睡魔が襲ってきた。

 たぶん。
 昨日の朝から一睡もしていないからだろう。
 身体が限界を迎えたらしい。



 どうしよう。
 このままベンチで眠ってしまおうか。

 お母さんとの約束まで、まだ一時間くらいある。
 だから、それまで眠っておいた方がいいのかもしれない。

 もともと泊まるところはない。
 となると、どのみち、これからはしばらく公園(ここ)で過ごすことになる。


 ベンチで眠るとはいっても。
 幸い、明るい時間帯だけのこと。

 夜は『心が呼吸できる世界』で過ごす。
 だから危険な思いはしなくてすむ。


 ……と思おうとしているだけ、なのかな。

 本心は。
 そんなこと少しも思っていない、のかもしれない。

 明るい時間帯だからといって。
 ベンチで眠るということは。
 やはり少し危険なのではないか。

 仮に危険ではないとしても。
 雨が降っているときはどこで過ごすのか。

 今日は晴れているからいいけれど。
 雨の日はベンチで過ごすというわけにはいかない。

 そう考えると。
 いろいろな問題点が出てくる。


 だからといって。
 他に眠れそうな場所もない。


 問題点は山積み。

 だけど。
 眠らないと。
 このままでは倒れてしまう。


 ベンチで眠る。
 そのことは、ものすごく抵抗がある。
 だけど背に腹は代えられない。


 仕方がない。
 こうなったら勇気を出して。
 眠ることにしよう、ベンチで。



「彩珠……?」


 そう思ったとき。
 正面から声がした。