「関係ない⁉
 なんだ、その口の利き方は‼」


 思った、そうなると。

 私の言葉に親父はものすごい剣幕を立てている。


「ただでさえお前は出来損ないなのに、
 その上、夜中に出歩く不良になったとは‼
 お前はどこまで失望させれば気が済むんだ‼」


『出来損ない』
『不良』


 なんて。
 なんて情けないんだ。
 この親父は。

 言えないのか。
 そんなふうにしか。


 まったく。
 話にならない。


「お前は失望させるばかりではなく
 人の話も聞くことができないのか‼」


 そんな親父に呆れながら。
 自分の部屋に戻ろうと歩きかけたとき。

 またもや親父が怒鳴り声のような大声を上げた。


 なにが。
 なにが話だ。

 そんなのは話ではない。
 ただの侮辱。



 やっぱり。
 地獄だ。
 (ここ)は。


 せっかく。
 素敵な『心が呼吸できる世界』で過ごすことができて心が穏やかになっていたのに。

 (ここ)に帰ってきて。
 違う。
 親父と関わってしまったことによって。
 素敵な『心が呼吸できる世界』で過ごしたことが全て消されてしまった。



 嫌だ、もう。

 帰りたくない。
 (ここ)には。



 そう思った瞬間。
 自分の部屋に向いていた足が玄関の方に。


 出たかった。
 とにかく(ここ)から。


 玄関のドアを開けたとき。
 親父が「待たないか‼」と怒鳴り声を上げた。

 だけど、その声には振り向かず、そのまま家を飛び出した。