って。

 私もブレスレットを身に付けているということは。
 那覇も……。

 そう思い、那覇の左手首を見た。

 那覇もブレスレットを身に付けている。

 そして。
 真っ赤……だ。
 那覇が身に付けているブレスレットも。

 ということは。
 あるんだ、那覇にも。
 心の中に抱えている深い悩みや傷が……。


「そうそう、ブレスレットを身に付けると
 相手が身に付けているブレスレットも見えるようになるの」


 私が那覇の左手首を見ていることに気付いた惺月(しずく)さんがそう言った。


「だからブレスレットを身に付けていない人たちは、
 身に付けている人たちのブレスレットは見えていないの。
 というより『心が呼吸できる世界』(ここ)に繋がる出入り口が見えていない人たちは
 ブレスレットが見える見えない以前の話になるけどね」


『心が呼吸できる世界』(ここ)に繋がる出入り口って。
 公園を歩いているときに見えた、あの真っ白な光のこと……?


『心が呼吸できる世界』(ここ)に繋がる出入り口が見えるのは、
 心に大きな悩みや傷を抱えている二十歳未満の人たちのみなの」


「……そう……なんですか……」


 出てこなかった。
 言葉が。
 すんなりと。


 というより。
 わからなかった。
 どう言えばいいのか。


 確かに私もいろいろと悩んだり傷ついたりしている。

 家にいても学校にいても、いつも苦しくて辛い。

 そして、それらのことに限界を感じた。
 だから病気でもないのに学校も休んで、それから家にも帰らない選択をした。


 だけど、まさかそこまで深刻な状態だとは思わなかった。



『心が呼吸できる世界』(ここ)に繋がる出入り口。
 それが見えるのは。
 心に大きな悩みや傷を抱えている二十歳未満の人たちのみ。


 気付かなかった、全く。

 見えていないんだ、意外と。
 自分のこと、って。