「約一週間、どこに居たんだ。
お母さんからは『友達の家に泊まっている』なんて言っていたけど、
友達ってどういう友達なんだ。
詳しいことも何も言わないで、いつまでもよその娘を泊めさせるなんて
どうせ、ろくな友達じゃないだろ」
やっぱり。
親父は私や私の周りの人たちのことを悪くしか言わない。
「……たっ……大切な人のことを悪く言わないで」
恐怖で身体が固まっていても、なんとか声を出すことができた。
「まったく。
お前には迷惑かけられっぱなしだ」
…………。
聞いていない。
親父は。
私の話なんて。
これっぽちも。
「お前はこれ以上、私に苦労をかけさせるな」
情けない。
なんて情けないの。
この親父は。
嫌だ。
もう。
「……出ていく」
心の限界。
「私、家を出て行く」
満杯で溢れている。
なぜだろう。
『家を出て行く』
その言葉を言った瞬間。
身体がスッと軽くなり動くことが可能になった。
だから、まずはベンチから立ち上がり親父から少しでも遠くに離れるために歩き始めた。