空澄(あすみ)と凪紗のやりとり。
 それを見ながら思い出していた。

『心が呼吸できる世界』(ここ)に来る前。
 空澄と一緒に夕焼けを見に行ったことを。



『心が呼吸できる世界』(ここ)に繋がる真っ白な光が存在する公園。
 そこを通り越して、さらに進んで行く。
 途中に坂道や階段もある。

 しばらく歩いていると。
 住宅街から少し離れ、周りには木や花や草が増えてきた。

『あと少しで着くから』
 そう言った空澄の声に引き寄せられるように歩いて行くと———。


 そこには。
 木や花や草で豊富に囲まれた神社が。

 そこを少し奥に進んで行く。

 目的地に着いたのか。
 空澄は足を止めた。

 空澄に続いて私も足を止める。

『ここが彩珠(あじゅ)と一緒に来たかったところ』

 空澄が穏やかな笑顔で私の方を見ながらそう言った。

 それから空澄は周りの風景を眺め始めた。

 私も空澄に続いて風景を眺めると———。

 そこから見る景色。
 それは、とても美しくて感動する。

『すごくきれい』
 そんな言葉が自然に出てくる。


『ここから見る空も最高だぞ』

 空澄がそう言って空を見上げる。

 そんな空澄を見て私も続く。

『なんて美しい空なの』
 空があまりにも美しいから。
 やっぱり自然に出てくる、そんな言葉が。

『なっ、きれいだろ』
 空澄は満面の笑みでそう言った。

 今、私と空澄が見ている空。
 それは、やさしくオレンジ色に染められた夕焼け———。

『この空を彩珠と一緒に見たかった』

 私と一緒に——。

 空澄がそう言ってくれた。
 そのことが照れくさいけれど、とても嬉しくて。

『ありがとう。
 空澄にそう言ってもらえて、すごく嬉しい』
 空澄にそう言う。
 そのことが、なんだか少しだけ照れくさい。
 それでも空澄に伝えたくて。
 空澄に笑顔でそう言った。