真っ白になった頭の中に次々と混乱やら恐怖やらのぐちゃぐちゃな感情が頭の中に投げ入れられてぐるぐると回っていく。


きらわれた、ひかれた、きらわれた、あきれられた、すぐぼうりょくにはしるおんなだとおもわれた、ぜったいきらわれた………


どさり、と結構な音を立てて右手から男性が地面に落ちた。もともと意識は失っていたし痛みも感じないだろうから大丈夫だろう。当たりどころが悪くても運が悪かったと思ってくれ。


何故かグラナティス様は騒ぎもせずにわたしの足元に転がっている令息たちの怪我の状態を冷静に確認してから、美しいガーネットの瞳をわたしに向ける。



「とりあえず、気を失っているだけだし治療室に運ぼうか。貴女も一緒に……グレイス嬢?」


「……………………、」


「グレイス嬢…………………………グレイス?」


「…………………うっ、」



ぼろっ、と大粒の涙が目から溢れ出す。


グラナティス様の驚いたような空気を感じながらもどうしてこうなったのか、言い訳すら浮かんでこなくて。ただただ、嫌われたとそれだけが頭の中にこびりついて、もうどうすればいいのかわからなかった。



「うわああぁあぁぁんっ!!!」



取り繕うことも忘れて号泣しながら馬車も使わずに走って家に逃げ帰ったわたしの姿に、家にいたお兄様は仰天していた。