その日、わたしは運命に出会った。


サラサラと揺れる艶やかな黒髪。同色の長い睫毛に伏せられた憂いを帯びたガーネットのような瞳。どこか儚げにも見える繊細な顔立ちなのに目元にぽつんとひとつだけあるほくろがこれでもかとこの人を妖艶に見せている。


全体的にはほっそりしているけどよく見るとちゃんと男性らしい筋肉もあってこれぞ理想的な細マッチョというものだろう。あとめちゃくちゃいい香りがする。離れていてもわかる芳しい香りって何、すごい。


わなわなと震える体を抑えることもせずにその人を舐めるように見つめるわたしだけど、他の人はどうやらわたしとは違う意味でその人を見ているらしい。



「見てはいけませんよ。黒い髪に赤目などと……まるで悪魔の子ですわ」


「なんと恐ろしい……」


「おぉ嫌だ。いくら高貴な血筋に高い魔力持ちとはいえあれでは化け物ではないか」



コソコソしているようで聞かれても構わないと言った声量で言われる悪意の塊のような言葉にイラッとしてしまう。この人たちの目は節穴か?あれだけ美しい人に対して何を言っているのかと胸倉掴んで揺さぶりたい。


しかし周りを見渡してみてもほとんどの人が嫌悪や恐れなどの表情を浮かべてその人を見ているのだからわたしの心の叫びは共感されないらしい。絶対他の人の審美眼がおかしい。