目の前の純恋は

俺からの深い愛を

過剰摂取しすぎたらしい。


「あわわわ……」


口から泡を吹きだしそうなほど

キョドりながら、心臓に手を当てている。



真っ赤な顔で

しゃがみだしたと思ったら


「これは夢です。
 神様が私に見せてくれた幻想です。

 そうだ。絶対にそう。

 いくら夢でも、推しに憧れの
 胸キュンプロポーズなんてされたら
 心臓止まっちゃう。

 え? 
 もしかして……もう私、死んでる? 
 キュン死しちゃった?」


まるで壊れたロボットみたい。

早口で独り言をつぶやき始め


「私はもう寝るね。

 狂くんの夕飯は
 テーブルに並べてあるからね。

 1階の客間に、狂くん用の
 布団をひいておいたから。

 お風呂で使うタオル
 洗面所の棚の中だよ。

 この家に置いてあるものは
 何でも使っていいからね」


さらに猛スピード早口で

説明し尽くした純恋は


「狂くん、おやすみなさい!」


パニックを起こした少女のように

アタフタして

俺の前から全力で消えてしまった。