保健室のマネキン

その時、授業が終わるチャイムが鳴った。

「先輩、ありがとうございました。そろそろ戻りますね」

「ちょっと待って、寝ぐせついてる」

「えっ」

「髪ゴム持ってる?髪、きれいにするよ」

「一つならあります。ありがとうございます」

「全然。かわいいんだから、髪も素敵にね」

先輩はそう言った時の笑顔がとてもカッコよかった。
私の髪を結んでくれるときはとてもドキドキした。先輩の手が私の髪を触るたびに私の心拍数も上がっていった。先輩に心臓の音聞こえてないかな。
先輩は私の髪をとても可愛くしてくれた。

「はい、できたよ。高めのお団子にしてみた。青井さん髪の長さボブだから、お団子しにくいと思うけど、こんな感じにすることでかわいいでしょ」

先輩がしてくれた髪型は、あえて少し崩したお団子でとてもオシャレだった。

「先輩、凄すぎです。こんな髪型初めてで、とってもかわいいです。ありがとうございます」

「どういたしまして。とっても似合ってる。それと、もし俺が一人前の美容師になったときには、一番に髪切らせてよ」

「えっ、私でいいんですか」

「青木さんが良いの、お願い」

先輩のキラキラスマイルに思わず頷いてしまった。

「ありがとう、じゃあまたね、奈緒子ちゃん」

そう言って先輩は頭にキスをしてきた。

「…!は、はい、ありがとうございました」

私は驚いて固まってしまった。そんな私を見て先輩は微笑んでいたが、私は恥ずかしくなって慌てて保健室を出できてしまった。

先輩、奈緒子ちゃんって呼んだ…?キスした…?
一気に体温が上がった気がした。

「奈緒子ちゃん、このキスの意味分かるかな?」
と、先輩が誰もいない保健室で呟いていたことを奈緒子は知らない。

頭にキス。その意味は、、、可愛くてたまらない。