その辺の暴走族と腐女子の話

わけが分からない。わけわかめもびっくりだ。

「友達、にはならせていただくんですが、
なぜ私が?」

ちーちゃん、さっきからずっとにこにこしている。突然やってきたと思ったらなんなんだこいつは。

「総長、なんでこいつなんですか、おかしいですよ」

「何もおかしくない。千尋じゃなきゃ嫌なんだ。友達になってくれてありがとう。これで登下校も、休み時間も、なにをするにも一緒ってこと?」

定義が、おかしい。さすがにそんなにべったりだと…

「きもちわるい」

「おま、!」

「え……」

ちーちゃんは今にも泣き出しそうな表情になった。
ぷるぷると小刻みに震えている。

そのとき。
屋上のドアがぎい、と開いた。

「千尋ーちょっと聞いてよ、トイレめちゃくちゃ混んでてさあ、って、御門千晴じゃん!」

たったった、と真央が近づいてくる。すとん、と私の隣に腰を下ろすと、そのままお弁当を片付け始めた。

「どしたの、こんな早く千尋のとこくるなんて。とうとう耐えられなくなっちゃった?」

どういうことだ、真央。それではまるで真央はちーちゃんが私のところに来るのを知っていたようではないか。

「おい、宮本。総長にタメ口は失礼だろ」

金髪くんが眦をつりあげ真央を怒っている。なんかちょっとおかん味を感じる。エプロン似合いそう。

「ふーん、私がいなきゃ千尋に仲良く出来もしない癖に?」

「ぐっ、それとこれとは話が!」

さっきから静かなちーちゃんは、私をとろんとした目で見つめている。ドン引きである。

「涼、別にいいよ。僕は偉くもなんともないんだし」

「ですが!」

「だってよ?涼介?」

くそ、と小さく声に出して、金髪くんが黙った。

「真央、どういうこと?ちーちゃんが私に会いに来るって、真央は知ってたの?」

やべ、心の中だけのあだ名、ちーちゃんを口に出してしまった。馬鹿とは私のことである。

「ちーちゃんって!おっかし。千尋だけだよ、天下の御門千晴をちーちゃん呼ばわりするの。あーおもしろい」

あっはっは、と大きな口を開けて笑う真央。金髪くんは咄嗟に私を怒ろうとしたようだが、ちーちゃんに止められていた。

「千尋、これがあだ名っていうやつなんだね!?僕、すっごく嬉しいよ!」

目をキラキラさせるちーちゃんは一度黙ってほしい。

「あのね、御門は千尋に興味津々だったの。千尋、自覚ないだろうけど、めちゃくちゃ面白いし、可愛いんだからね?今みたいに御門のことちーちゃんって呼ぶとか、うちらの会話って結構聞き耳たてられてるよ」

真央によると、ちーちゃんは私たちをたまたま見つけ、その会話の面白さから、友達になりたいと思ったらしい。意味不明すぎる。こんなに天然で暴走族の総長が務まるのだろうか。