その日の午後、コーヒーを淹れに給湯室へ向かうと、睦合くんと出くわした。彼とはよく給湯室で顔を合わせていて、その度に軽く会話をしていた。
「カエルまんじゅう、ありがとうございました」
珍しく彼から話しかけられ、ぺこりと頭を下げられる。
「いえいえ。睦合くんカエル好きなの?」
「はい?」
「あ、さっき写真撮ってたから……」
これは言わない方がよかっただろうか。睦合くんは少し考え込んだ後で、小さく口を開く。
「べつに特別好きってわけじゃないですけど、足田さんに貰ったものだから」
「え!?」
「というのは冗談で、あのお店、母方の祖父の実家の近くなんですよ」
「あ、なるほど……そうだったんだ」
赤沼さんの話を聞いたあとだから、何だか心臓に悪い。それに、真顔で冗談を言うのはわかりづらいからやめてほしい。……と言っても、相変わらず彼の表情は見えないのだけれど。
「でも温泉、いいですね。ゆっくりできました?」
「うん。すっかり元気になったよ」
「羨ましい。僕も今度行こうかな」
「うん、ぜひぜひ」
「はい、じゃあ次はご一緒させてくださいね」
「うん? えっ!?」
「じゃあお先に失礼します」
なんだか今、さらりととんでもないことを言われた気がする……。
また冗談か、単に聞き間違いだろうか。
少しだけ悶々とした気持ちで、彼が去った後の給湯室でしばらくの間、コーヒーメーカーとにらめっこしていた。
「カエルまんじゅう、ありがとうございました」
珍しく彼から話しかけられ、ぺこりと頭を下げられる。
「いえいえ。睦合くんカエル好きなの?」
「はい?」
「あ、さっき写真撮ってたから……」
これは言わない方がよかっただろうか。睦合くんは少し考え込んだ後で、小さく口を開く。
「べつに特別好きってわけじゃないですけど、足田さんに貰ったものだから」
「え!?」
「というのは冗談で、あのお店、母方の祖父の実家の近くなんですよ」
「あ、なるほど……そうだったんだ」
赤沼さんの話を聞いたあとだから、何だか心臓に悪い。それに、真顔で冗談を言うのはわかりづらいからやめてほしい。……と言っても、相変わらず彼の表情は見えないのだけれど。
「でも温泉、いいですね。ゆっくりできました?」
「うん。すっかり元気になったよ」
「羨ましい。僕も今度行こうかな」
「うん、ぜひぜひ」
「はい、じゃあ次はご一緒させてくださいね」
「うん? えっ!?」
「じゃあお先に失礼します」
なんだか今、さらりととんでもないことを言われた気がする……。
また冗談か、単に聞き間違いだろうか。
少しだけ悶々とした気持ちで、彼が去った後の給湯室でしばらくの間、コーヒーメーカーとにらめっこしていた。