「だってほら、カエルのまんじゅう写真撮ってますよ……?」
「えっ?」

 気味悪そうに顎で睦合くんをさす赤沼さん。促されて見れば、彼は今あげたばかりのカエルまんじゅうを、スマートフォンのカメラにおさめていた。

「本当だ……。カエル、好きなのかな?」
「いやいや、足田さんからもらったからじゃないですか?」
「それはないでしょ」
「みんな言ってますよ? 睦合くん、足田さんとだけはちゃんと話してるって。あまり優しくして、変に好かれないようにしたほうがいいですよ……?」
「いや~、ないない。みんな考えすぎだって」

 睦合くんは、地味な見た目と寡黙さから、課の中でもとっつきにくい存在として、みんなから一線を引かれている。
 仕事は丁寧な上に早く出来も良いので、評価自体は高いのに、協調性がまったくないのが玉にきず。
 どうにか彼に心を開いてもらいたいと、上司として絡んでいるうちに、周りから変な目で見られてしまっているらしい。
 それに、私が彼に構うのは決して優しさだけではなかった。
 睦合くんの無造作なボサボサ頭は、似ているのだ。私が愛して止まない、実家のトイプードルに。はじめこそ彼に苦手意識はあったものの、愛犬に似ていると思ったらなんだか愛着が湧いてしまい、だんだんと話しやすくなってきた。
 睦合くんも少しずつ話に応えてくれるようになり、距離は縮まっていると感じていたのだが、こうして周りに勘違いされてはさすがに可哀想だ。
 彼のフォローを兼ね、今一度赤沼さんに向き合う。

「そもそも私と彼は十も離れてるわけだし。赤沼さんが心配してることは何もないよ。ここまで離れてると、なんかもう姉弟か親子みたいな感覚じゃない?」
「まあ、確かに……」

 年齢のことを伝えると、彼女も納得してくれたのか、渋々と頷く。

「それより、話があったんじゃない?」
「あ、そうでした。すみません……。お休みの間の報告なんですけど――」

 赤沼さんも睦合くんに対して少し厳しいところはあるけれど、仕事は手を抜かずやってくれる優秀な部下だ。
 上手く仕事の話に切り替えると、睦合くんの話を交わした。