コーヒー店のアールグレイ女史


次の日、私と井上は西島を会議室に呼んだ。

「西島君、残念だったけど来年は受かるように頑張りましょう。受験はまた一からだけど、今回の試験は自信にはなったはず。論文の書き方は特訓しましょう。それとね、井上さんからいい報告があります。」

「奨学金返済の件ですが、少し軽減できる方法がありました。これを使うと少し楽になります。」

井上は西島に説明した。

「井上さん、ありがとうございます。助かります。ただでさえアルバイトさせていただいて助かっているのに、うれしいです。」

井上は西島に微笑みかけ、説明が終わると会議室を出ていった。

「もうひとつ、大切なお話があります。西島君、これから先どうするの? 」

「今と同じように、バイトを掛け持ちしながら勉強しようと思っています。」

「この事務所一本にする気はない? 今から来年受験が終わるまで集中したら? 」

「ありがとうございます。少し考えてみます。」

「そうね。彼女にも相談してみたら? 」

「えっ? 彼女なんていないですよ僕・・・そんな余裕ないし・・・」

「そうなの? 街角で女性と二人でいるところを見かけたけど・・・」

「あー、もしかして夏休み前ですよね、それならゼミの友達です。彼女に彼氏の誕生日プレゼントを選んで欲しいと頼まれたんです。」

「そうだったの。ごめんなさい。」

ほっとした。スッと心のモヤモヤが消えて、西島を見られるようになった。

「ちょっと待っててね。」