コーヒー店のアールグレイ女史


21日、西島は事務所に出社した。

井上は雑用を西島に頼んだ。いつもは静かな大人の事務所が、西島が来ることによって少し明るくなった。
事務の女性も電話をとる声が少し高くなったように感じた。


あっと言う間に6月2日が来た。試験結果はHPで16:00に結果が発表される。
西島は6月2日も事務所に出社した。少し硬い表情に見える。
まわりのみんなは極力普通を装った。
しかし、16:00近くになると事務所には私と井上、そして西島しかいなかった。
みんな気が気ではなく、いたたまれなかったのだ。

「西島君、会議室で結果見てらっしゃい。」

私はそう西島に声をかけた。西島は硬い表情でうなずき、会議室に消えた。
私と井上は西島が会議室を出てくるのをじっと待った。この5分くらいがとても長く感じた。
ガチャっと音がして、西島が会議室から出て来た。

「藤堂さん、井上さん、僕受かりました。」

西島は声を震わせ、目が赤くなっている。

「そうか、よかった。」

井上は西島の肩を抱いて祝福した。
私は声が出なかった。

「藤堂さん・・・」

「うん うん・・・良かった。」

私は思わず西島を抱きしめた。目が潤んだ。
うわっ・・・慌てて離れた。

「さぁ、次は7月ね。」

「はい。」

西島は元気に返事をした。


思わず抱きしめちゃった・・・